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加速する海外展開
成長戦略の今
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ダイキアクシス成⻑戦略の大本丸であり、SDGs、またESG投資の視点からも熱い注目を集めている環境機器関連事業の海外展開について、2022年11月、インド・スリランカ工場の落成式を終えた経営陣にロングインタビューを行いました。海外展開の背景から現状の課題、今後の展望までさまざまな角度から切り込み、全3編でお伝えします。

 

Contents

1. なぜ海外進出したのか、ダイキアクシスの戦略

2. 現地のリアル事情、その突破口は︖

3. 今後の展望、ダイキアクシスが描く未来

おわりに.「PROTECT×CHANGE」実現のために

 

 

1. なぜ海外進出したのか、ダイキアクシスの戦略

 

ダイキアクシスが海外に目を向けたのはなぜですか。

大亀︓海外進出自体は、私が入社する以前の社長の意思決定ですが、一番大きかったのは2013年に上場したことです。上場後のビジネスを考えたとき、浄化槽の市場は国内だけでは閉鎖的であり、人口減少により市場が縮小する可能性もある中で、何らかの形で海外に行っておきたかったという思いがあったようです。2013年、インドネシアに工場を持つ現地企業を買収したところから本格的に海外進出が始まりました。

髙岡︓浄化槽は住宅着工件数によって出荷数が決まるビジネスです。産業排水系も設備投資が多い年ほど業績が上がる構造になっています。その中で、日本はかなり飽和状態なのです。競合メーカーも多く、今後市場を拡大していくには海外だということです。

 

 

インドネシアに進出したきっかけは何だったのでしょうか。

大亀︓当時社長がインドネシアを訪れた際、現地で浄化槽に似た製品を作っている会社があり、排水を処理するという概念が浸透していたことから、その会社を買収したのが始まりだと聞いています。そこに日本の技術を取り入れながら生産体制を整え、東南アジアをはじめ各国に出荷する生産拠点としていきました。

髙岡︓現在、中国、インドネシア、インド、スリランカの4カ国に生産拠点を置き、代理店網35社を合わせて9カ国に事業を展開しています。このうち中国は、前身であるダイキ時代から進出し、浄化槽の部品を製造して輸出するところからスタートしました。現在はエンジニアリングの会社に移行しています。

 

進出してみての手応え、あるいは課題に感じたことはありますか。

髙岡︓やはり文化が異なる中、非常に難しいというのが率直な印象です。インドネシアはイスラム圏で宗教の違いも大きいですし、インドではカースト制度があるため労務管理の難しさもあります。最初は言葉の問題にも戸惑いました。日本語は曖昧な表現があるため、交渉ごとには非常に弱いなというのは肌身で感じています。
これは個人差もあります。インドに関しては、現在の駐在員が長くインドでビジネスをしていたこともあり、周りとのコミュニケーションが非常によく取れていると思います。先日のインド工場の落成式では州知事にもご出席いただき、政府との関係も良好です。

大亀︓進出しているのは経済成長の途上にある国々なので、市場としてはかなりポテンシャルがあることは見えていますし、将来性はすごく感じています。ただ、浄化槽は実利としての導入メリットを感じにくい商品なので、セールスには苦心しています。
環境面での意義を理解してもらうために、浄化槽を売り込むだけではなく、水環境整備の重要性から政府に対してアプローチしているところです。中でもインドはかなり好感触を得ています。まだまだ道半ばですが、あらゆる方法をもって、ビジネスとして勝っていかなくてはと考えています。

 

インド工場

 

難しい課題をどう克服していくのでしょうか。

大亀︓日本においても、高度経済成長期に公害等の問題があり、そこから規制が進み、浄化槽法ができたことで、下水道が整備されていない地域の建物には浄化槽を入れなくてはならない、設置後はメンテナンスをしなくてはならない、国からの認証を受けた製品しか売ってはならないといったルールが確立されました。そういった水環境整備のルールづくりそのものを日本の実績として、今われわれがターゲットとしている国に導入すべきですし、提案していく必要があると考えています。

髙岡︓水資源も一つのテーマとして取り組んでいます。例えばインドは、井戸も規制されるほど水が少ない国です。一方で緑が多く、公園や緑地帯もたくさんあります。では公園での散水はどうするのかとなったときに、浄化槽で排水を再利用し、散水するシステムを導入しました。
ガンジス川の水を浄化槽できれいにして川に戻す取り組みも政府系組織と協力して進めています。少しずつ浄化槽への理解が深まればと考えています。

 

 

今後の成長戦略において、海外事業の位置付けをどう考えますか。

髙岡︓事業全体に占める売上こそまだ少ないですが、今後を考えると非常にウエートは大きいと考えています。中長期計画では2025年に40億円を達成する数値目標を出し、それを超える事業推進を目指しています。

大亀︓海外事業の今後は会社の将来を決めるといっても過言ではないと思っています。企業価値としてもそうですし、海外事業を確立して利益を取れる持続可能な体制をしっかりつくっていくことが重要だと思います。

髙岡︓その体制づくりとして先般、組織改編を行いました。2022年はインドに注力するためインド事業部を立ち上げましたが、2023年は事業部を統合し、海外管理課を海外管理部に昇格させます。目的は事業推進体制の強化です。大亀専務をトップとして、来期はより戦略的に動いていきます。

 

 

 

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