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せいじろう博士に聞く!
浄化槽のはなし パート2
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日本で独自に開発され、海外ではそのまま「JOHKASOU」と呼ばれる浄化槽。家庭から出るし尿や生活雑排水を敷地内で処理することから、「小さな下水処理場」ともいわれています。その仕組みや種類について、元・技術部長「せいじろう博士」が解説します。

せいじろう博士(渡部 誠二郎)

元・技術部 部長

ダイキアクシスの前身であるダイキ時代から、
水処理関係の仕事に携わって40数年。
施工管理からメンテナンスまで、水処理のことなら何でも知っている生き字引的存在。


 

微生物の力で汚れを分解!

博士、第2弾です。
浄化槽についてさらに詳しく教えてください。

まず、仕組みからお話ししましょう。浄化槽の中ではたくさんの種類の微生物(バクテリア)が活躍していることを前回お話ししました。家庭から出る排水の主な汚れは有機物ですから、微生物が有機物を食べて分解する、これが「水処理」の基本的な仕組みです。

 

 

微生物の中には、空気を必要としない嫌気性微生物と、空気を必要とする好気性微生物がいます。そこで、浄化槽の中も、空気を送らず嫌気的に処理する槽と、空気をたくさん送って(ばっ気といいます)好気的に処理する槽とに分け、嫌気処理と好気処理を繰り返すことによって、汚水中のさまざまな有機物(汚れ)を分解しています。

 

微生物が分解する他には
どのような処理方法がありますか。

基本は「沈殿」による固液分離です。浄化槽には大量の水と一緒にさまざまなものが流入してきますから、生物処理する次の水槽に送る前に、まず入り口のところで大きなゴミや不純物を落とし、沈殿分離槽で沈殿させます。貯まった沈殿物は定期的に引き抜いて処分します。また、微生物が処理した水にもまだ汚泥が残っていますから、出口のところでもう一度、余剰汚泥を沈殿させ、最初の沈殿分離槽へ戻して再処理します。
こうしてきれいになった上澄み水だけを、最後に消毒して、河川等に放流します。

 

最後に消毒するのはなぜですか。

病原体の数を減らすことが目的です。その指標として大腸菌の数があります。放流の基準としては3,000以下となっていますが、一般的に大腸菌は消毒することによってほとんど死滅するといわれていて、現実的には検出されないのが現状です。消毒の仕方も、固形塩素を使うなどいろいろな処理方法があります。

 

すべては良質な放流水質のために

浄化槽にはどんな種類がありますか。

まず規模によって、小型浄化槽(5〜10人槽)、中型浄化槽(12〜50人槽)、大型浄化槽(51人槽以上)の3種類に分類されます。何人分の排水を処理するかということですね。家庭用の小型浄化槽はカプセル型のものが主流ですが、処理する水量が増えると小さなカプセル型では処理できなくなるので、円筒型の大型浄化槽を用います。大きいものでは直径2.5メートル、長さが11メートル弱のものがあります。

 

 


大きさによって機能も異なるのですか。

基本的な仕組みは同じですが、集合住宅や業務用などの中・大規模槽では、ろ過や凝集、脱窒素機能など、より高度な機能を備えたものもあります。また近年では、中空糸ろ過膜を使った処理方法もあります。中空糸膜の材質はポリエチレンで、表面に0.4ミクロンの孔が開いています。1ミクロンは1ミリの1,000分の1ですから、これでろ過すると一度にかなりいい水質を得ることができます。

 

同じ小型浄化槽でもさまざまな型があります。
なぜこんなにも種類が多いのですか。

細かな型の違いは、放流基準によるものです。少し専門的な話になりますが、例えばこのXF型という小型浄化槽は、BODが10、CODが20、窒素が10、T-Pが1という水質基準で設計されています。「この水質なら放流してもいいですよ」という基準は、日本全国各地域で異なるのです。身近なところでは、瀬戸内海も特殊なエリアなんですよ。その地域地域の基準に合わせた水質にするために、いろいろな機能を付加していくため、浄化槽の種類も多岐にわたるのです。そこが開発部の設計者たちが苦心しているところです。

 

 

 

 


常に挑戦し続ける、アクシスの開発魂

最新の浄化槽ってどんな感じですか。

もう一つ注目してほしいのが、素材です。弊社は全国に先駆けてFRP(繊維強化プラスチック)製の浄化槽を開発した歴史を持ちますが、その後も「水処理のパイオニア」として、業界初のDCPD(熱硬化性樹脂)製の浄化槽を発売するなど、さまざまな新製品を生み出してきました。
そして近年新たに、よりコンパクトで高度処理が可能なPP(ポリプロピレン)製の浄化槽を発売しました。このPPには再生プラスチックを38%使用しており、環境意識の高い省エネ型製品として、浄化槽では初めてのエコマーク商品認定を受けています。

 

新製品の開発は今後も続けていくのですか。

今も実際に、あるところで試験機を作って実験していますよ。弊社では数年おきに新しい製品を出しています。主には今ある製品の後継機種の開発です。この開発には、開発部だけではなく、営業、設計、施設管理など部署を超えたプロジェクトメンバーが携わっています。今売り出し中の浄化槽が動いている時から、数年先にはこういう新しい製品を出していこうと話し合い、継続的に取り組んでいるのです。

 

 


例えば何年後にどんな製品が生まれるのでしょう。

そこは企業秘密です(笑)。各メーカーさんも同じように考えられていると思いますが、例えば、電気の消費量が少ない省エネ型浄化槽やコンパクト型浄化槽といったものを開発していけば、当然、使用者の負担が軽くなりますし、現地での工事費も削減されます。そうした課題を解決していくために開発を続けているのです。

 

 

 


まさに環境創造開発型企業としての姿勢ですね。

浄化槽は今、世界各地で必要とされています。特に日本から遠く離れた海外では、輸送費を削減するためにも、現地生産体制を確立することが重要な課題となっています。小さな一歩かもしれませんが、より良い製品を開発し、「JOHKASOU」の普及に努め、水環境の改善に貢献することで、未来の「住みよい世界」を実現することができると思っています。

 

 

 

▼浄化槽のはなしパート1からじっくり復習!