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せいじろう博士に聞く!
浄化槽のはなし
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聞いたことはあっても見たことのある人は少ないのでは。日本で独自に開発され、海外ではそのまま「JOHKASOU」と呼ばれています。私たちの暮らしに欠かせないものでありながら見えないところで人知れず活躍している「浄化槽」について、「せいじろう博士」ことダイキアクシスの技術部長が解説します。

せいじろう博士(渡部 誠二郎)

技術部 部長

水処理関係に携わって40年超。
ダイキアクシスの歴史はもちろん、
「水」「水処理」「浄化槽」については何でも知っている生き字引。

 

暮らしを支える「縁の下の力持ち」

せいじろうさんは、
この道40年の水博士だそうですね。

博士ではありませんが、ダイキアクシスの前身のダイキ時代から40数年、ずっと水処理関係の仕事に携わってきました。入社当時は工事部門で施工管理の仕事をしていて、途中で12年間、東京や本社で施設管理を経験したりして、今は技術部という部署で施工マニュアルの作成や後進の技術指導にあたっています。

 

やはり博士ですね。
さっそくですが博士、浄化槽とは何ですか。

浄化槽とは、一般家庭から出るし尿および生活雑排水を処理し、公共下水道以外の河川などに放流するための施設です。一般家庭から出る水には、し尿(トイレから出る水)と、生活雑排水(台所、お風呂場、洗濯機などから出る水)があります。この両方の水を集合して処理するための装置が浄化槽です。

 

一般家庭のどこで処理しているのですか。

一戸建ての家でいえば、敷地内の地下に設置されています。家庭から出た水を敷地内で処理して、放流しても良い水質基準にして、敷地外へ流しているということです。
浄化槽は、法律(浄化槽法)で定められた施設で、公共下水道がない地域に必要です。もとは汚水の衛生処理(伝染病の予防やまん延の防止等)を目的としていましたが、現在では環境保全についても目的としています。

 

台所やお風呂から出る水が、
河川の汚れに

浄化槽ができる前はどうしていたのですか。

昔はトイレ自体が、水洗式ではないくみ取り式でした。くみ取り式の槽があって、そこにし尿をためていくという形式です。その後、し尿だけを処理する単独処理浄化槽ができて、トイレの水洗化が進んでいきました。さらにその後、し尿と生活雑排水を合わせて処理する合併処理浄化槽ができました。
ちなみに今「浄化槽」と一口にいっていますけれども、現在浄化槽と呼んでいるのは合併処理浄化槽のことをいいます。平成13年に法改正されて、それ以前にあった単独処理浄化槽は「みなし浄化槽」という扱いで分類されています。

 

合併処理浄化槽へ移行したのはなぜですか。

単独処理浄化槽の時代は、し尿のほうはきれいになるけれども、台所などの水はそのまま河川に流していたので、川が汚れて魚も少なくなっていきました。合併処理浄化槽の普及により、汚れた水が100%処理されるようになり、身近な河川も、瀬戸内海も東京湾も、水がきれいになったということです。

 

し尿より生活雑排水のほうが
汚れているということ?

汚れの占める割合が大きいということです。家庭から出る水の中で、汚れ度合いでいうと、し尿の汚水は全体の30%程度で、残りの70%は生活雑排水が占めています。汚れの度合いというのは、水の中の有機物の比率で、有機物が多いほど汚れた水です。一般的に「BOD」というのですが、そのBODのボリュームが大きいということです。

 

博士、専門用語です。BODとは何ですか。

浄化槽の中では、水の中にある有機物(汚れ)を微生物が食べてきれいにするのですが、微生物は生きていくために空気を必要とします。酸素ですね。その微生物が必要な酸素の量をBOD(生物化学的酸素要求量)という形で表します。だから汚れがひどいと、酸素もたくさん必要になるということです。

 

浄化槽の中の小さな戦士たち

浄化槽の中に微生物は
どのくらいいるのでしょう。

微生物は顕微鏡などを使わないと見えない小さな生物の総称ですが、浄化槽の中には1mlあたり1,000万〜1億個のバクテリアがいます。ちょっと想像がつかない数ですね。その中にもいろんな種類のバクテリアがいて、よい子のバクテリアといたずらをする悪い子のバクテリアがいます。大きさも、小さいバクテリアから少し大きいバクテリア、原生動物までさまざまです。
このたくさんのバクテリアが、金魚がえさをぱくぱく食べているのと同じように、有機物をぱくぱく食べていると想像してください。そして小さなバクテリアがえさを食べていると、分裂します。1つのバクテリアが2つになり、2つが4つになり、分裂しながら有機物を食べています。

 

え?槽の中で増殖しているのですか。

そういうことです。その小さなバクテリアを、少し大きなバクテリアまたは原生動物がまた食べています。海の中の魚と同じで、小さい魚を大きい魚が食べていると想像してくれたらいいかと思います。浄化槽の中には小さなバクテリアも必要だし、大きな原生動物などいろいろな微生物が必要だということです。
だから開発の人たちは、水処理がうまくいっているかどうかということを、顕微鏡で水を観察して、今ここの排水処理施設にはどういうバクテリアがいるかということを見たりしています。

 

最適に処理するためには、
バクテリアの育て方が大切なんですね。

バクテリアというのは意外とわがままなんです。空気を送る量を多くしたり少なくしたり、浄化槽の維持管理者がバクテリアの状態を見ながら大切に育てていかないといけません。ですから、経験豊富な維持管理者が点検すると水質が良くなり、経験未熟な人がすると水質が悪くなるといったことは、やはり多々あります。
育て方は、主にはばっ気する空気の量、あるいは時間です。24時間、空気を送るだけが良いのではなくて、オンオフを選んでいるということです。流入するえさ(汚れ)はこちらで調節できませんから、浄化槽の中で、その微生物、バクテリアが最大に活躍できる環境を維持管理者が調整しています。

 

環境を守り、社会インフラを支える
「JOHKASOU」

浄化槽の仕組みや種類について
もっとうかがいたいのですが、続きは次回に。
最後に、博士にとって「浄化槽」とは何ですか。

世界には、まだまだ水処理施設が未整備の地域がたくさんあります。そういったところに浄化槽を設置して、放流水が良くなることによって河川も良くなるし、河川の水は地下にも浸透しますから飲み水も良くなります。環境的にも衛生的にも、水処理が果たす役割は重要です。
私はこの会社に入社して42年ですが、そういった水処理の仕事に携わることができたことを誇りに思っています。たかが浄化槽、されど浄化槽です。