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よりクリエイティブに!
知識創造理論による気づきのマネジメント体験
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今回は人材育成におけるユニークな取り組みを紹介します。ダイキアクシスでは2022年より愛媛大学社会共創学部と協働し、知識創造活動(ナレッジ・マネジメント)を体感する新入社員研修プログラムを実施しています。体を使ったグループワークを通じて彼らは何を学ぶのか。講師でありファシリテーターを務める愛媛大学山中亮准教授にお話を伺いました。

 

クリエイティブなコミュニティーを創る

 

 気づきをマネジメントする、知識創造理論(ナレッジ・マネジメント)とは

近藤:このプログラムの目的、狙いから教えてください。

山中:最終的な目的は、気づきの力でよりクリエイティブな組織を創ることです。そのためには、気づきは個人の経験をもとに生まれること、それゆえに多様であることを理解し、お互いの気づきを尊重し、言葉にし合うことが大切です。その中で、コミュニティーの一員として自分がそこにどう踏み込んでいけるかを考えてもらえればと思います。

 

近藤:楽しむことも目的の1 つだと言われていましたね。グループワークには皆、主体性を持って楽しんで取り組んでいました。体を使って、汗をかいて、笑って。あんなに笑うことって今までなかったので、本当にこのプログラムは大事だと思います。

山中:この気づきをマネジメントするプロセスをナレッジ・マネジメントの基礎理論で「SECI(セキ)モデル」といいます(図1)。みんなでやってみて(共同化)、経験の共有の中で気付いたことを引き出し(表出化)、それぞれの気づきをつないで(連結化)、組織に浸透させ(内面化)、チームとしての質を上げていく。それって僕たちスポーツの世界ではずっと経験してきたことなのです。それを今日はフラフープを使ったグループワークで皆さんに体感してもらいました。

 

 

 

近藤:個人の知識を組織的に共有する共同化や表出化のプロセスがとても大事だと思いました。SECIモデルでいうところの「暗黙知」を「形式知」にしていくところでしょうか。そこが組織としての課題です。

山中:その形式化された知識をさらに内面化して組織に浸透させるプロセスも大事です。それによって個人としても組織としてもより高次の知識を生み出すことができるのです。

近藤:似たような取り組みで、今OJT研修をやっているのですが、その中で「経験学習サイクル」というレポートを書かせています。今日学んだことを振り返り、自分の中でセオリー化し、どう次に生かしていくか、ということを日々考えてもらっています。

山中:コルブですね。ちょうど私が担当している「リーダーシップ入門」という授業もコルブの経験学習モデルをコンセプトにしています(図2)。授業を聞いて、それに対してどう思ったか、それをどうつなげていきたいかという振り返りを15回の授業で行い、文字にして最後にポートフォリオとして残します。さらに学部としては、それをeポートフォリオというシステムに落とし込むことでカリキュラムデザインの構築にも活用しています。

 

 

近藤:振り返りを繰り返していくことも大事ですね。

山中:経験からの振り返りを繰り返しながら学びを深めていく経験学習モデルを、組織に応用していったものがSECIモデルだと思います。一人ひとりが経験から得た気づきを、共同化、表出化、連結化、内面化するプロセスを繰り返すことによって、暗黙知と形式知のスパイラルを創り出し、組織としての知識を高めていく——というようなメカニズムを若いうちから何となくでも分かっていれば、いつか役に立つのではないかなと思っています。

 

 

「PROTECT×CHANGE」の実現に向けた人材育成

 

 立場を超えて社会の課題に向き合い、共創していくために

 
近藤:この研修プログラムは、当社の専務取締役CIO・CGO大亀裕貴が社会共創学部の「社会共創カウンシル」の委員を務めていることから山中先生とのご縁で実現しました。当社としては、企業の人材育成と大学のアカデミックな知見を融合することで、コーポレートスローガンである「PROTECT×CHANGE」の実現に向けた人材育成と組織のパフォーマンス向上につなげたいと考えています。大学としてはこの機会をどのように考えていますか。

山中:社会共創学部は、地域の人たちと協働しながら課題解決策を考え、リーダーシップを発揮できる人材の育成を理念としています。地域社会の課題は答えが1つではありません。そういった課題に向き合う時、その課題解決のプロセスは大学でも企業でもそんなに変わりはないと思います。業種を超えて、立場を超えて、人が社会に対してお互いの知識を出し合って、どうやってより良くしていくかを考えていく時に、経験学習モデルやSECIモデルのようなプロセスがあるよということが、こうした機会を通じて地域と共有できればいいなと思っています。

 

 
近藤:今日は愛媛大学の学生さんたちにも参加いただきました。人事担当者としてはあわよくば(笑)直接採用にはつながらなくても、「ダイキアクシスって面白いことやっているな」と興味を持ってもらって、将来的にこの経験の共有が何らかの形でお互いに活かされることがあれば嬉しいと思っています。

山中:やはりファンというか、気になる人をどれだけつくれるかが大事ですよね。それは大学としても個人としても同じで、そういったところがもっとつながっていけば面白いと思います。新入社員の皆さんには「PROTECT×CHANGE」のもと、一層の決意を持って課題に向き合い、ぜひ気づきの力で新たな未来を創造していってもらいたいと思います。

 

 

 

 

山中 亮(やまなか・あきら)
愛媛大学 社会共創学部 地域資源マネジメント学科 准教授

愛媛大学 社会共創学部 地域資源マネジメント学科 准教授
愛媛県大洲市出身。東京学芸大学教育学部卒業、愛媛大学大学院教育学研究科修了、広島大学大学院教育学研究科博士課程単位取得満期退学、博士(教育学)。1992年より愛媛県内の小・中学校で教壇に立つ。2004年よりサンフレッチェ広島、2006年より愛媛FCのプロサッカーコーチを務め、2013年愛媛大学特任助教を経て2016年より現職。スポーツの持つポテンシャルに注目し、教育、人材育成、地域の活性化、グローバル化につなげていく研究や活動を行っている。

 

 

参加した新入社員からも一言!

 

フラフープを使った研修!?

 

大坪 空知(おおつぼ・そらかず)

フラフープの記録を競うといわれて、やったことのない課題に最初は戸惑いましたが、1回目の記録が22秒だった時に次は半分にしようと自分の中で目標を立てました。チームでアイデアを出し合い、実際にやってみて修正し、2回目には11秒を切って目標を達成することができました。自分で自分のことをまだよく分かっていない部分があるのですが、アイデア出しやチーム運営も得意なのかなという気づきもありました。

 

 

 

山ノ内 莉央(やまのうち・りお)

さまざまな研修で自分が考えたことを言葉に出すことの重要性を教わってきて、それを実際に体感することができた研修だったと思います。実践型で、しかも楽しんでするグループワークだったので、自分から意見も言えたし、聞くこともできました。チームワークも良くて、気づきを言葉にして実行に移すことがよくできていたと思います。言葉のコミュニケーションを実践できたことがとても良い経験になりました。

 

 

 

 

 

「フラフープを使った研修シーン」の動画はこちら!

フラフープを使った研修シーン movie