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この人に聞く:Rio WAZA
インドモデルはどう確立されたか[前編]
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2025 年に向けて当社グループにおける海外展開の最大ミッションと位置付けられるインド事業。「クリーン・インディア」を掲げるモディ政権のもと、インド市場の開拓から自社工場設立まで、そのすべてに最前線で携わってきた和座統括部長にインタビューし、インドにおける排水処理事業の今をお伝えします。

 

 

「クリーン・インディア政策」とダイキアクシス

 

前回07では、環境機器関連事業の海外展開について、大亀専務と髙岡常務にお話を伺いました。今回はインド事業について伺いたいと思います。はじめに、ダイキアクシスはなぜインドに進出したのか、その経緯から教えてください。

和座:私自身は当時、インド専門のコンサルティング会社に在籍し、主に農業と水の分野で日本企業の海外進出をサポートしていました。その中で「水」をテーマにしたダイキアクシスと出会い、「インド市場を調べてみませんか」と提案したのが、2016年後半のことです。その後、現地調査から法人設立までコンサルタントしてお手伝いさせていただきました。

 

 

「PROTECT×CHANGE」の新コーポレートスローガンを策定し、インドネシア工場を生産拠点に海外進出を本格化させた時期ですね。当時インドの状況はどうでしたか。

和座:その頃インドでは、2014年に誕生したモディ政権のもと「クリーン・インディア・プロジェクト」が発表され、屋外排泄ゼロ運動としてトイレの普及が急速に進められていました。トイレを設置すれば、次に必ず出てくるのは汚水処理の問題です。インドの下水道普及率は15%程度でしたので、地域や個々の家庭で汚水処理を行う分散型排水処理の浄化槽市場は拡大が期待されました。

 

その後コンサルタントを経て、ダイキアクシスに入社された経緯は?

和座:初期のテストマーケティングを終え、販売代理店の開拓に動き始めた頃、ダイキアクシスではグローバル事業本部を新設し、大亀社長自ら陣頭指揮を執り始めていました。インドにも何度か来られて一緒に現地をまわる中で、「和座がダイキアクシスに来るなら本格的にやろう」と言っていただきました。
私自身も長年インドでビジネスをする中で、浄化槽に他の分野にはない可能性を感じていましたし、コンサル業務を通じて政府や現地企業にもがっちりとコンタクトをしていたことから「ぜひやらせてください」とお願いし、2018年7月の現地法人設立に向けて動き出しました。

 

 

インド市場の現況と展望

 

その後どのようにしてインド市場を開拓してきたのか、その詳細は後編で伺いたいと思います。今回はまずインドの現況とインドビジネスの展望についてお聞かせください。

和座:私がインドで仕事を始めた10年ぐらい前から「中国の次に来るのはインドだ」といわれてきましたが、ようやくその兆しが見えてきました。今のインドはいつ急激な成長をしてもおかしくない準備ができている状態です。これから5年間のインドはすごい勢いで成長していくだろうとみています。
もう一つの見方としては、日本はアメリカ、中国市場へと進出してきましたが、その国に根付いた企業は多くありませんでした。では次にどこと組むのかといったときに、インドは日本のことが大好きな国なので、日本企業にもっと来てもらいたいというのが私の思いです。日本がもう一度、世界の中で成長するためには絶対に欠かせない国だと思っています。

 

 

ダイキアクシスとしてはインド市場をどう見ていますか。

和座:浄化槽が認知され市場が出来始めて、次に怖いのは低品質のコピーメーカーなどが次々に参入してくることです。ダイキアクシスとしてはしっかりと売れる体制づくりをしておくと同時に、「JOHKASOU」というキーワードとともに高品質のトップメーカーとして市場に認識されることが重要です。高品質製品を供給するメーカーと認知されることで、これからのインドの分散型排水処理市場に「JOHKASOU」「ダイキアクシス」をブランドとして広めていくことが可能になります。これまで市場開拓をメインにやってきましたが、営業と生産部門が協力して臨まなくてはならないところに来ているなと足元では感じています。

 

日本企業としてはどうでしょうか。インド市場に参入するとき何が課題ですか。

和座:ひとつはインド向けのローカライズした製品が作れるかどうかです。性能面、価格面、インドでの使用に適した3側面いずれかでのローカライズ製品です。日本のトップ技術のフルスペックの製品を持ってきて同じ値段で売っても絶対に売れません。直近10年間のインドではクオリティは80%、値段も80%という製品が好まれていました。
ただ、それもこれから経済成長とともに変わっていくので、日本のメーカーも入りやすくはなると思います。ただし、主にヨーロッパメーカーはこの10年間ですでにインド市場に参入して名前を売ってきたところが多々ありますので、そういった分野では壁は厚いかもしれません。

 

 

「PROTECT×CHANGE」実現のために

 

そのようなインド市場に向けて、ダイキアクシスでは中期経営計画の中で、インドへの集中投資を海外戦略の柱のひとつとしています。今後どう取り組みますか。

和座:生産面では、2025年に第3工場稼働をターゲットに動いています。ムンバイ近郊の委託工場(第1工場)、そして昨年、完全自社工場として新設したデリー近郊の第2工場と、それぞれ違うアプローチで生産拠点を立ち上げてきました。次の第3工場では省コストで立ち上げ可能な組立工場を考えています。すでにスリランカでそのモデルケースをスタートさせています。
営業面では、引き続き代理店網を拡充させる営業をしながら、全体の統率に取り組んでいます。現在23社の販売代理店がインド各地で活動してくれていますが、その多くが建設会社や工務店、ポンプ代理店などの企業で、浄化槽専門の部署がないため、技術面での課題があります。専属のメンテナンス人員を置いてもらうなどルールづくりも強化しています。
あわせてインドの州立技術大学と連携し、人材育成にも取り組んでいます。メンテナンス技術の特別カリキュラムを組み、大学とダイキアクシスのダブルネームで修了証書を発行することで、技術力の高い現地人材の確保につなげていきたいと考えています。

 

ムンバイ近郊の委託工場(第1工場)

 

デリー近郊の完全自社工場(第2工場)

 

SVSU(ハリヤナ州立技術大学)

 

大学とダイキアクシスのダブルネームの修了証書(案)

 

 

最後に「PROTECT×CHANGE」の実現に向けて考えをお聞かせください。

和座:インドを中心に事業を展開していく中で、スリランカ、バングラデシュ、ネパール、そして中東にもコンタクトが広がっています。それらの地域においても「PROTECT×CHANGE」というテーマは、環境を守るという意味においても、彼らの文化を守りながら変えるべきところは変えるという意味においても、非常に共感されます。
その中で、やはりせっかく日本人がインドまで来ているのですから、もっと日本人が前面に出ていくことがテーマの実現のためには効率的かつ効果的だろうと思っています。これからも最前線に立ち、環境と浄化槽への理解と認知を高めていきたいと思います。

 

ありがとうございました。次回後編では、代理店開拓からインド中央政府の推奨認可取得まで、どのようにしてインド市場を開拓してきたのか、詳細をお伝えします。

 

 

 

和座 良太
海外事業統括本部 海外営業統括部長
兼 海外営業部長

インド専門コンサルティング会社にて、日本とインドの架け橋となるべく両国を駆けまわる中、ダイキアクシスに出会う。市場参入に向けて2018年4月入社。以来インド事業のすべてに最前線で携わる。海外営業統括部、インド事業部長を経て現職。1年のほとんどをインドで過ごす。